現場で即座に
現在、カナダのマニトバ州フリンフロンにある777亜鉛・銅鉱山は減産中です。新たに鉱脈が発見されない限り、Hudbay Minerals社は生産開始から15年目となる2022年に坑内採鉱を終了する予定です。可能な限り長く操業を続けるため、トロントに本社を置く同社は効率向上を実現し、操業可能性を高めようとしています。
効率性を高める方法の1つは、掘削積込原単位、すなわち実際に鉱石を運搬する時間を延長すると同時に、1シフトあたりのバケットへのずり積み込み回数のばらつきを減らすことです。2018年には、目標に対するバケットへのずり積み込み回数の観点でパフォーマンスが低下したシフトが一部ありましたが、他のシフトでは、バケットへのずり積み込み回数平均の56回を上回りました。
この課題に対処するため、Hudbay社は、2018年12月、エピロックとパートナーシップを組んで、人員と資産をリアルタイムで追跡するデジタルテクノロジー、Mobilaris Mining Intelligence(MMI)が違いをもたらすかを判断すべく、3か月のパイロットプロジェクトを開始しました。その結果、実際に効率が改善しました。
MMIを使用してテストレベルで25のアクセスポイントから機器を追跡したところ、シフトの開始時点で、エピロックのスクープトラムST14坑内用ローダーなどの機器の位置を即座に特定でき、シフト中に優先順位を調整して、同社の目標の達成率を高めることができたため、掘削積込率が7%向上しました。
「オペレータは、時として他の作業のため、採石現場を離れなければならないこともあります」と、生産コーディネータのネイサン・スチュアート氏は地上で説明します。「今では、生産の実時間を追跡でき、オペレータが採石現場場に戻るべきと判断した場合には、そのように指示することができます。」
フリンフロン出身のスチュアートは、フリンフロンからスノーレイクまでの緑色岩帯の火山帯の上にある1階建ての鉱山事務所の中央には、シンプルな2モニターのワークステーションが設置されており、ここから作業員に指示を出します。一方のモニターには、採掘レベルとアクセスポイントの地図が表示され、もう一方のモニターには、各機器が最も重要な位置のアクセスポイントを通過する際、その機器に関する情報が表示されます。
「このパイロットプロジェクトは、既存の技術をいくつか試し、効率性の向上を評価するよい機会でした」と、サドベリーから777鉱山現場への電話で、採鉱マネジャーのボブ・マクドナルド氏が指摘しました。「現在では、作業計画を安定して作成できるようになっています。」
広義では、MMIは短期間の制御(SIC)適用でHudbay社に貢献しています。SICとは、ばらつきを抑えて、プロセス(この場合は掘削積込)プロセスを目標から外れないようにする手法です。坑内採鉱では通常、シフト終了を待って、生産目標と採鉱実収率(トン)の差異を評価する必要があります。そのため、シフト中の損失は回復できません。
MMIの素晴らしい点は、シフト中に掘削積込の原単位が目標を下回っている場合、信号を送り、すぐに調整できることです。たとえば、ある採鉱現場が目標を上回っており、別の採鉱現場が目標に届いていない場合、スチュアート氏は掘削積込機械を再割り当てして、両方の採鉱現場で目標を達成できるようにします。
プロセスで生成されるデータは金ほどの価値があると、Hudbay社の技術開発マネジャーのマイク・ヤンコフスキー氏は指摘します。
「情報管理の観点から、Mobilaris Mining Intelligenceには多大な価値があります」と、トロントを拠点とする電子技術者のヤンコフスキー氏は説明します。「現在では、発生した問題に対処すべきかを判断するのに必要な情報を入手できます。」
さらにデータは、さまざまなシナリオでバケット何個に掘削積込できるかを正確に予測するのにも役立ちます。ベストケースのシナリオは、早朝コンポーネントと利用可能な給油車を組み合わせた昼間シフトで、オペレータは、1時間あたりバケット11個に掘削積込できます。
「習得に少し時間がかかりましたが、MMI導入の成果には満足しています。この鉱山の他の領域にも導入を計画しています」と、スチュアート氏は述べています。Hudbay社は、約210 km東にある金・亜鉛鉱山のララーにもMobilarisの導入を計画しています。